在校生・卒業生の声
社会人1年目というのは、どんな職場であれ幾度となく自己紹介をすることになるのだと思います。
その度に「高専卒なんです」という話をすれば、必ずと言って良いほど
「へぇー、珍しいね。建築関係の勉強とかしてたの?」と返ってきました。
それに対して「いや、全然そんな感じじゃなくて…」
と説明を繰り返していれば、
嫌でも自分が通っていた場所は世間から見れば特殊なところなんだということが見えてくるものです。
とはいえ高専卒と言われて真っ先に建築関係を連想されるのもそのはず。
私はビジネスコミュニケーション学科を卒業後国家公務員となり、
農林水産省の外局である林野庁に入庁しました。
最初の赴任地は北海道の知床。
3年間世界自然遺産の保全の仕事をしこの4月から札幌に転勤となり、
現在は経理の仕事をしています。
ビジコミらしからぬ林業の世界に進んだと思ったら、
「木を伐って売る」林業のイメージとは全く異なる世界遺産の仕事をし、
かと思ったら次は経理をやることになり、
なんだかビジコミっぽい道に戻ってくるという、
我ながらビジコミの学生としてもはたまた林野庁の職員としても、
異質な道を歩んでいるなとつくづく思います。
自然の中で自分の身体を最大限に使って仕事をしたいと思って林野庁の道を選んだ当時の自分は、
1日8時間パソコンとにらめっこする今の自分を見て
「こんなはずじゃなかった」と漏らすかもしれません。
思い返すとそもそも高専に入学した頃の自分からすれば、
私の5年間の高専生活だって「こんなはずじゃなかった」づくしに見えるはずです。
元々英語が勉強したいと思って入学したはずが、気付けば社会学・哲学の本を読み耽るようになりました。
他にも、突然3年次で辞めて北海道に行くと言い出してみたり(結果的に北海道に来ることにはなりましたが…)、
ハチミツがマイブームになって、卒業後は養蜂家になると母親に宣言したこともありました。
今考えれば目的の定まらない行き当たりばったりのことばかりだったなと思いますが、
そんな風に思い付きや興味の向かうままに色々なことができ、
「こんなはずじゃなかった」を喜ぶようになれた高専という場所はそうありふれたものではなく、
やはり世間からの見立て通りに特殊なところだったのだと思います。
5年間でいくつもの科目を学び、様々な知識や技術も得ましたが、
今の自分に一番役立っているのは恐らくそんな行き当たりばったりの日々の中で得た、
根拠のない自分自身への信頼感であるような気がしています。